『LOVELESS』「PAINLESS」

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歌詞が水泡のように浮かび消えるEDが切なくも美しくて、もう「やられた」という感じです。最初見たときは本当に衝撃的でした。ぼくはいつも高河ゆん作品に惹かれながら、完全にははまり切ることができないのだけど、それでもこの人に続いてメジャー化したCLAMPら他の同人系作家にはない、深度があると思います。

立夏「俺は、人生についてよく考える。何のために生きるのか、何で
ここにいるのか。そのうち二年前までの、母さんにとっての本当の立
夏が戻ってくる。そのとき、俺は多分消える。だから今ここにいても
意味はない。大切なことは過去で、思い出で、未来はただ消えるだけ
なんだ」
勝子「立夏くん。いつか消えるのはあなただけじゃないのよ。いつか
みんな消える」
立夏「死ぬってこと?」
勝子「そうね。でも生きているうちにも次々に消えていくの。先生だ
って昔は小学生だったけれど、その頃のことはもうほとんど覚えてい
ないわ。写真やビデオも残っているけど、二度と戻ることはできない。
つまり小学生の私は消えてしまった。中学生の私も、高校生の私も、
五分前の私も、もう戻ってはこない。みんな消えてしまったのよ」
立夏「それじゃ、過去は、思い出は意味はないの?」
勝子「意味がないとは言わないわ。でも大切なのは生きている今この
時で、いつか消えるまでの一瞬一瞬を精一杯生きていくのが人生じゃ
ない?」
立夏「でも、でもやっぱり分からないよ。何で人間は生まれてくるの? 
何で生きなきゃならないの? どうして、どうして人は死ぬの? 
もしかして大人も知らないの?」

勝子は立夏のカウンセラーなんだと思いますが、すごいこと、言うなあと思います。勝子の言葉が立夏を納得させられなかったのは、立夏は意味を求めているからです。立夏は母親からその存在を否定されていて、不安定な状態にある。それゆえになおさら亡き兄との絆=意味だけが、彼の存在を確かにするものとして求められ、信じられています。しかし、愛するものを亡くすことに意味を見出すことなど不可能です。
かけがえのないものであるからこそ、それを失うことの意味などありはしない。喪失に意味はなく、ただ悲しいだけです。そうした喪失の瞬間瞬間を生きていくのが人生なのだと、勝子は言っているわけです。生きることそのものが喪失である、と悟るとき、人は喪失の悲しみから自由になることができるのかもしれません。
しかし、その覚悟はまだこのぼくには出来てないようです。