『プラネテス』

「ごめんなさい、先輩。悲しいし、寂しいし、怒っていると思います。
でも、そういうのって分かち合うことで少しでも軽くすることができる
と思うんです。一人ではつらいことだって、二人なら……先輩!」

「うるせえ!全部、俺のもんだ! 孤独も!苦痛も!不安も!後悔も!
もったいなくってなあ、てめえなんかにやれるかよー!」

『プラネテス』第22話「暴露」より

NHK衛星第二にて毎週土曜日放映 http://www.planet-es.net/

この作品、前半は主人公のハチマキたちが所属するデブリ課の活躍を通して、宇宙活動の過酷さと素晴らしさ、そこに惹かれた人々の想いがリアルに(嘘っぽくなく)描かれていて、良かったと思う。ただ、フォン・ブラウン号の話になってからは、売りのリアルさがアダになったというか、人間模様、特に恋愛関係でのどろどろさに食傷、ちょっとひいてしまったというのが正直な感想である。
しかし、ここにきてこの人間模様の重さが効いてきている。ハチマキは人類初、7年間をかけて木星を目指すフォン・ブラウン号の乗務員となるべく、突然会社を去る。「なぜ自分に何も言ってくれなかったの?会社を辞めなければならないの?」と問うタナベにハチマキは「俺のことだ、お前には関係ない」と冷たく言い放つ。視聴者もタナベ同様、「なぜ?」と問い詰めたくなる堅くなさである。いくら木星が生半可な覚悟で到達できる目標ではないとはいえ、それまでの人間関係を断たなくてはならないほどのものなのか、ついこのあいだ、イイ感じになったばかりの彼女を突っぱねるほどのものなのかと思ってしまう。あんまりな豹変ぶりである。
上記の台詞は、月でタナベと再会したハチマキが彼女に対して、亡き恩師リカルドが癌であったことを自分に隠していたと怒る場面。船外活動を長期間行い、放射線を浴び続ければ、癌になってしまうことはいわば宿命のようなものだが、ハチマキは動揺を隠せない。タナベはいつもどおりのひたむきさでハチマキにぶつかるのだが、二人の距離は少しも縮まらず、彼女の言葉は空しくなる。タナベはハチマキのそばに行けないのだ。そうして、宇宙空間の闇に投げ出され空間喪失症となった時のように、ハチマキを、孤独に押しやる。
人生とは、人がおのれの夢に立ち向かうということは、孤独を選ぶことを意味するのだろうか? では、自分以外の存在を求める気持ちとは、何なのか?